家庭菜園者向け~土作りから始める自然農法~

1章 土作りの手順を知ろう

自然農法※において土作りはとても重要です。野菜が根を張り成長する土台が土であるからです。
野菜は根を深く張り、土の中の「微生物」を通じて、野菜の成長となる栄養素を吸収していきながら成長し
ます。土の中の微生物の力が最大化されることを目指して、土作りを行うことが大切になります。
本記事は家庭菜園初心者の方でも、すぐに始めてもらえるように作らせて頂いています

1-1 土作り前の事前準備~対象となる土地の環境理解~

■風向き・強さ
どこから強い風が吹いているかを確認します。とくに昼間の風の確認をします。確認方法は、ティッシュを割り箸に巻き付けて確認して下さい。

風向き・強さの確認

野菜の成長には、強い風よりは、そよ風が適しているため、強い風が来る方向には、背の高い植物や木があると、強い風を受け止めてくれるので、良い環境と言えます。そよ風が野菜にあたるような畝づくりを行っていきます。

■日の当たり方
朝、昼、夕方のどの時間帯に、どれくらいの日光が当たるのかを確認します。野菜の光合成を促進
するため、最適な(一日中当たっているのがベスト)日当たりを考慮して、畝づくりを行うためです。

■水の流れ
水がどこから来て、どこへ流れるのかを確認します。水の流れの確認は、雨の日に行って行います。水はけが悪いと、野菜が腐食する原因にもなります。そのため、水の流れを確認し、畝づくりに活かします。水を比較的多く必要とする野菜を水が溜まりやすい場所に配置します

■土の状態
▼土の歴史
土が今までどのように活用されてきたのかを知ります。歴史を知ることで、ある程度、土の特性を想定することができます。例えば、田んぼとして長年使用されてきたのであれば、粘土質の土質である可能性が高いことが想定できます

▼雑草の種類
どのような雑草が生えているかを知ります。雑草の状態によって土の状態を事前に想定することがで
きます。例えば、多様性に富んだ雑草(マメ科、キク科、シソ科、ヒユ科、イネ科等)が生えている
と、土がほぐされていて豊かな土壌である可能性が高い等です。
  

▼土の質
粘土質かパラパラしているのかを見ます。粘土質の場合、畝を高めにする等、水捌けをよくする工夫をします。粘土質の場合の写真は以下になります。土に水を混ぜて、細い棒を作ります。
 

    パラパラした砂質であれば、粘土質の土のように長い棒になりません。
    この場合、水持ち畝を低くしたり、畝を作らない等、水持ちをよくする工夫をします。

▼PH
どれくらいの酸性度であるかを知ります。6.5が概ねどのような野菜にも対応しやすい値になります。PHは、以下の写真にあるような酸度計(さんどけい)を使い測ります。酸度計はインターネットで購入することができます(1-2で後述します)。

PHが6.5ではない時の主な対応は以下になります。
・PHが5程度である場合は、天地返しの際に、草木灰を土の中に加えていきます。
・PHが7以上の場合、500~1,000倍に薄めたお酢を、天地返し後に畝を作った後に畝に撒きます。

▼硬盤層
30センチ程度掘ったところにある粘土質の土の層を硬盤層と呼びます。硬盤層があることで、そこに水が溜まります。野菜は必要な水分を、深く根を張ることで硬盤層から得ることができます。硬盤層の確認方法は、30センチ程度掘ったところにそれまでよりも、より粘土質な土があるかを確認します。

硬盤層が無い時には、耕盤層があるか、肥毒層があるか、何も無いか(人工的に作られた造成地等の場合に多い)となります。
・耕盤層とは、粘土質であるものの、スコップが容易に刺さらない程に硬い層のこと。
・肥毒層とは、粘土質の硬盤層の上に、石灰がしみこみ、カチコチに固まった層のこと。
耕盤層、肥毒層共に、頑張ってスコップを刺し、壊すことが必要となります。壊す理由は、水をしみ
こませ、植物の根っこがはっていけるようにするためです。

1-2 必要な道具や備品一式

■必ず必要なもの
 ・酸時計
 ・ティッシュ
 ・割りばし
 ・スコップ(シャベル)
 ・腐葉土(80cm×300cmの畝で80L程度)
 ・米ぬか(上記腐葉土が十分に発酵している場合、80cm×300cmの畝で1kg程度)
 ・油かす(80cm×300cmの畝で250g程度)
 ・軍手
 ・汚れてもよい服と靴
■あればよいもの
 ・燻炭か草木灰(PHが5程度の場合)
 ・燻炭とは・・・米のもみ殻を燻したもの
 ・草木灰とは・・・枯れた草や木を焼いたもの
一般的には、苦土石灰を入れることでPH調整をすることが多いですが、苦土石灰を入れると急激に土壌の酸度が変わってしまい、土壌微生物が減ってしまうため、燻炭や草木灰をおすすめします。
 ・お酢(PHが7以上の場合)
 ・長靴
 ・寒冷紗
 ・寒冷紗用の支柱
 ・寒冷紗の押さえピン

■米ぬか以外は、ホームセンターで購入できますが、インターネットの方が便利です。インターネットで揃えたい方は、下記リンクをご参照ください。
 ・酸時計
 ・スコップ(シャベル)
 ・腐葉土
 ・米ぬか
 ・油かす
 ・燻炭
 ・草木灰
 ・寒冷紗(80cm×300cmの畝で180cm×500cmの寒冷紗)
 ・寒冷紗用の支柱(80cm×300cmの畝で1800mmのトンネル支柱5本)
 ・寒冷紗の押さえピン(80cm×300cmの畝で10本)

1-3 土作りから収穫までの目安スケジュール

■春夏野菜から始める場合
 ・土作り前の事前準備 2月
 ・土作りの実施 3・4月
 ・種まき 土作りと同日~2・3日後
 ・間引き開始 3・4月~
 ・収穫 4月~8月頃
 ・自家採種 随時

■秋冬野菜から始める場合
 ・土作り前の事前準備 9月
 ・土作りの実施 9月
 ・種まき 土作りと同日~2・3日後
 ・間引き開始 9月~
 ・収穫 10月~3月頃
 ・自家採種 随時

1-4 土作りの実施 ~天地返し~

■実施時期
自然状態に近づけるために、初期のみ、天地返しを行います。天地返しとは、上の方の土と下の方の土を入れ替えることです。畑候補地で野菜の栽培を始める時に、最初に行いましょう。晴れている日に行うのがよいです。雨降りの時や、大雨の後は、土が重くなっているため、避ける方が無難です。

天地返しは大変ですが、土の上面にいる好気性菌と土の下の方にいる嫌気性菌が天地返しにより混ざり合い、活動が活性化し、野菜の成長を助けてくれます。最初に行えば、その後は行う必要はありません。女性の場合、中々一人で行うのは体力がいる作業です。体力に自信のある方に手伝ってもらうことをおすすめします。

■具体的な手順
 ▼地面に畝の線を引く(畝幅は80~90㎝程度)
 ▼地表~15センチぐらいの土を掘り、側面に積み上げる

 ▼15センチぐらいから30センチぐらいを掘り、別の側面に積み上げる
※30センチぐらいのところに硬盤層があります。
人為的に造成された土地の場合等、硬盤層がない場合もあります。

 ▼腐葉土、米ぬか、油粕を入れる(初期のみ入れます

畑は長年人の手が入っていることで、森林のような自然な循環が止まっている場合が多くあります。
自然な循環を取り戻すためのスターターとして最初にこのような設定(腐葉土、米ぬか、油粕を入れること)を行うのがよいと考えています。微生物が分解することで、土の中の栄養素を増やすことが可能になります
 
 ▼地表~15センチの土を戻します

 ▼15センチ~30センチの土を戻します(天地返し完了)

 ▼側溝を掘る

 ▼畝を作る

2章 育て方と収穫の仕方

2-1 畝づくり

■畝の方向、形の決定
日の当たり方や風向きなどを考慮して、畝の方向や形を決定します。一般的には日当たりを考えて、南北に畝を設置する場合が多いですが、風が強い場合には、風向きや水の流れを重視して畝を設計します。

風よけとして、風上に背の高くなる野菜や植物を配置するための畝を作り、風を弱める工夫をします。畝幅は大体、80㎝~90㎝ぐらいが使い勝手が良いです。

2-2 育てたい野菜の決定

野菜の特徴と野菜同士の相互関係の理解が大切です。例えば、以下のようなものがあります。
 ・主役     :主に育て収穫したい野菜(例、カブ)
 ・サブ     :主役と相性がよい野菜(例、小松菜)
 ・ボディーガード:主役とサブの成長をサポートする野菜(例、春菊)
 ・消毒役    :土の中のコンディションを良くする効果のある野菜(例、ねぎ)
 ・栄養補給役  :空気中の窒素を取り込み、土壌を豊かにする野菜(例、インゲンマメ)

2-3 種の購入

■自家採種固定種・在来種の種を購入されることをおすすめします。
そもそも、野菜の種には、固定種・在来種と、交配種があります。
交配種は、優性遺伝の法則を活用して、よい形質だけが現れるようにした種です。
例えば、Aのかぼちゃは「甘い」「小さい」、Bのかぼちゃは「大きい」「甘味は低い」の良い形質だけが現れるように交配して作ったCのかぼちゃが交配種)。
ただし、よい形質のみが現れるのはその種一代のみなので、同じ形質の作物が欲しい場合、種は毎年購入する必要があります。
一方、固定種・在来種は形質が固定した野菜で、以後自分で種が採れます。
種採りを毎年続ければ、その土地に適応していくと言われています。

2-4 種の撒き方

■種の撒き方
雨降りの前日や前々日に蒔くのがベストです。
雨降りの日や、雨降りの翌日など、土が湿っているときは避けましょう。上から踏むことで土が締まりすぎて発芽できなくなる可能性があります。
今回ご紹介する種は、いずれも適度な光があることによって発芽する「好光性種子(こうこうせいしゅし)」なので、地中深くに埋めることはしません。なるべく光が当たりやすく、土と密着している状態を作ることが重要です。
 ▼主役:カブ
  地面にパラパラと蒔き、上から踏む。上から薄く土をかけて押さえてもよい 
 ▼サブ:小松菜
  地面にパラパラと蒔き、上から踏む。上から薄く土をかけて押さえてもよい
 ▼ボディーガード:春菊
  地面にパラパラと蒔き、少し土をかけて上から踏む
 ▼消毒役:ねぎ
  根付きのネギを植える
 ▼寒冷紗をかける
  カブや小松菜などのアブラナ科は虫に食べられやすいです。                                       頻繁に畑に行けない場合は、寒冷紗をかけておくことで、無農薬でも虫食いをかなり減らすことができます。

2-5 収穫する

■間引きしながら食べる
 風通しがよくないと、虫が付きやすくなるためです。
■雑草の扱い方
 ▼種植え前
  先に野菜が育つように最初は雑草を刈る。雑草の根っこが微生物の餌になるため、根っこは支障ある場合を除いてなるべく置いておきます
  ▼芽生え後
野菜の背丈より低く、風通しが良い状態を保つように雑草を刈る。

3章 種の自家採種に挑戦する

■種採りの魅力
 自家採種した種は、先代の種が記憶したその土地の情報を蓄積しています。そのため、次世代になればなる程、その土地に適応していき、元気に成長する可能性を高めることができます。そのため、自家採種されることをおすすめします。
■自家採種した種の例 左:バジル、上:春菊、右下:インゲンマメ
■元気な野菜を種採り用に残す
 アブラナ科で花の色が同じもの(カブ・小松菜)は交雑しやすいため、どちらかのみを残す等、注意が必要です。

4章 育てる際のポイント

4-1 水やりと種まき後の肥料や農薬

水やりは行いません。雨水で野菜を育てます。野菜はより多くの水を得るために、根を地中深く張ります。そうすれば、自分で地中から水を得られるため、干ばつが続くなど異常事態がない限り、水やりは基本的に行いません。

肥料や農薬も加えません。肥料や農薬を加えないことで、土に住む微生物が、枯れ葉などの有機物を分解して、野菜に必要な要素を供給してくれます。やがて、野菜の根っこや枯れ葉なども微生物に分解され、次世代に必要な要素になる自然の循環が起こっていきます。農薬が必要でないのは、植物に必要な微生物まで減らしてしまうためです。

4-2 風通し

野菜の風通しをよくするために、随時、野菜を間引きし、収穫して食べて下さい。野菜の間をそよ風
が流れていく程度が良いです。

4-3 野菜と雑草の関係を知る

雑草の役割を理解することが大切です。例えば、イネ科のススキであれば、深く根を張りながら、土を豊かにしてくれる役割もあります。とにかく雑草を刈るというよりは、共に生きることを大切にした上で、野菜が小さな時には野菜の成長が雑草の成長に負けないように刈り、ある程度育ってきたら、野菜の背丈より低い状態に刈ることをします。

4-4 野菜と虫の関係を知る

虫とは共生関係を結びます。虫は弱い野菜を間引きして食べてくれます。
虫が食べてくれることで、元気な野菜が育ちやすい環境を生み出してくれます。
また、多様な種類の野菜を植えることで、単一の虫の過剰発生が起こりにくい設計にします。

さらに、虫同士には共生関係もあります。例えば、インゲン豆に集まったアブラムシが過剰になってくると、テントウムシがやってきて、アブラムシを食べること等があります。
観察を通じて、何が起きているのか、虫の役割について気付くことを大切にしてください。

4-5 種まきに向いている時期

季節的には、春と秋に蒔き時が来る野菜が多いです。お住まいの地域によって、前後がありますので、蒔きたい野菜の蒔き時を調べてみるのもよいですね。

また、一番重要なのは季節的なものですが、その次に月の満ち欠けを考慮して種を蒔くのがよいです。満月の時に種をまくと元気な発芽に繋がることが多いです。満月のタイミングでは地球が太陽と月の間に挟まれる状態になり、太陽と月それぞれからの引力が拮抗するため、種が根を伸ばしやすいと考えられます。

5章 まとめ

農薬や肥料に頼らない、自然な畑を始めるにあたって大切なポイントをまとめます。
・畑にする土地の環境を理解する
・必要物を準備する
・自然の循環が起こりやすい土作りをする
・種を蒔き、間引きながら収穫する
・自家採種に挑戦する

みなさまの畑のお野菜がすくすく育ちますことを心よりお祈りしております(^^)

※「自然農法」とは、実践される方によって様々な定義があります。ここでは、便宜上、肥料や農薬に頼らず、自然状態に近い元素の循環を起こし、活用する農法という意味で「自然農法」と記載しております