家庭菜園で農薬を安心に使いたい方必見!無農薬で栽培のコツも紹介

家庭菜園での野菜に被害を与える虫や病気。せっかく家庭菜園なのだから、なるべく安心な農薬や、無農薬で対応したいと思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか? 薬を使えば、作物を虫や病気から守ることはできます。
しかし、農薬は薬ですので、使う際には配慮が必要です。私達がかぜ薬等を服用するときには、使う量や使い方等定められているように、農薬にも作物に使用する際には決まり事があります。
というのも、農薬は安全に使うために、使う量や使い方などについてテストを経て国で登録されており、間違った使い方をすることで、収穫した野菜に農薬が残留する可能性もあるからです。 家庭菜園でより安心して野菜を栽培するには、私達が普段口にする材料で虫よけ剤を作ったり、さらに農薬を使わずに栽培できる方法もあります。

そこで、今回は「家庭菜園で安心に農薬を使いたい方必見。無農薬で栽培のコツもご紹介」をテーマに取り上げました。
初心者の方にもできるだけわかりやすい言葉で書きましたので、この記事を読んで頂いて、家庭菜園での安心な農薬の選び方や使用方法、さらに農薬を使わない方法について理解を深めて頂けましたら幸いです。

1.農薬の役割と仕組み

1-1 農薬とは何か?農薬の役割

農薬とは、農作物に害を与える病原菌や、害虫、雑草などから守るための薬のことです。 よく耳にするところでは、殺菌剤や殺虫剤、除草剤などがあげられます。

・殺菌剤…病原菌やウイルスを抑える
・殺虫剤…害虫を駆除する
・除草剤…雑草を防除する

参照:農林水産省HP

農薬取締法では、「農薬」とは、「農作物(樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という。)を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス(以下「病害虫」と総称する。)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤(その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。)及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる植物成長調整剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。」とされ、また農作物等の病害虫を防除するための「天敵」も農薬とみなす、とされています。

日本で使ってもよい農薬は、人の健康や環境への影響などについて確かめられ、国に認められたものだけです。
参照:農林水産省HP

農薬は、人で例えると、風邪をひいたときに薬を飲むようなイメージです。状況によっては必要なときもあると思いますが、根本的には、病気や虫を寄せ付けない健康な体を作ることが、農薬をできるだけ使いたくない方にとっては大切です。

1-2 農薬が効く仕組みは?

農薬が虫や病気に効果を発揮するのはなぜなのでしょうか?ここでは農薬が効く仕組みについて説明いたします。
農薬は、虫や病気などの対象を弱らせたり、殺したりして、作物をその被害から守ります。
農薬には様々な種類があり、その中でも家庭菜園でよく使われるものとしては殺虫剤があげられます(3.で後述)。
殺虫剤では、虫の神経伝達や呼吸を阻害したり、成長に必要な脱皮をできなくして虫を退治します。
▼殺虫剤が効く仕組みの例(神経伝達を邪魔して退治)、脱皮できないようにして退治

農薬は「選択性」農薬は選択性を利用して作られています。
選択性とは、防除の対象となる生物(病原菌・虫・雑草等)とそれ以外の生物の様々な差によって、薬の効力や影響に違いが生まれることです。
例えば、昆虫は脱皮するけれど、人はしません。この差に着目して、昆虫の脱皮を阻害して死滅させる農薬(殺虫剤)等があります。このように、できるだけ抑制したい虫等にのみ効力を発揮するように作られています。
しかし、選択性が高いからいくら使っても安心というわけではありません。基本的に、農薬は薬になりますので、使う場合は、正しい使用量や使用方法を守ることが大切です。

2.農薬を使うことのメリットデメリット

農薬を使うことの主なメリットデメリットを以下にまとめています。

■農薬を使うことのメリット
・虫や病気などから作物を守ることができる→同品種の大量生産が可能に。収量の安定に貢献
・商品として売りやすいきれいな作物を安定して収穫できる
・雑草を抑えられる→重労働である雑草取りに掛かる時間を劇的に減らす
・虫が嫌いな人は虫を見なくて済む

■農薬を使うことのデメリット
・いなくなってほしい害虫の天敵も殺してしまう可能性がある
・同じ系統の農薬を使い続けると耐性がついてしまい、効かなくなる場合がある
・使用方法を正しく守らなければ、健康に影響を与える可能性がある
・毒物・劇物である農薬を使用する場合は、農薬取締法による管理に加えて、毒物及び劇物取締法に基づいた保管・管理が義務づけられている

3.家庭菜園に適した農薬の種類

■有毒性による分類
農薬は、その有毒性の高さによって、毒物・劇物(げきぶつ)・普通物に分類されています。
家庭菜園で農薬を使用際は、安心の観点から毒性の低い普通物がよいでしょう。
なお、毒性は、毒物>劇物>普通物の順です。

■使用目的による分類
どんな対象に効果を発揮したいかによって以下のような種類があります。
効果を発揮したい対象をしっかり見極めて農薬を選ぶことが大切です。
例えば、ダニは昆虫ではないので、殺虫剤の中にはダニに効かないものがあります。ダニを退治したいのに、ダニに効かない殺虫剤をしようしてしまうと、ダニの天敵である有益な生物を殺してしまうことになる可能性があるため注意が必要です。
参照:農薬工業会HPなどを参考に作成

家庭菜園で使用機会が多いと考えられる殺虫剤について、詳しく以下で取り上げます。
殺虫剤の中では以下のような種類があります。
使用する場合は、対象とする害虫だけに効くものを使う方がよいでしょう。というのも、その害虫の天敵も一緒に殺してしまわないためです。
また、同じ農薬を使い続けることで、抵抗性ができ、効きにくくなります。使用する場合には、系統の違うものをローテーションで使用することが必要です。
当然ながら、人体への毒性が低い普通物であるかどうかも考慮しましょう。

・有機リン系剤…もともと毒ガス兵器として開発
・カーバメート系剤…カラバー豆(アフリカ産)の根部にある毒成分から開発
・合成ピレスロイド系剤…除虫菊に含まれる殺虫成分を化学的に合成したもの
・昆虫成長制御剤(脱皮阻害剤等)…昆虫の変態を促したり、幼虫体の維持をするホルモンを化学的に開発 ・生物農薬(微生物殺虫剤)…蚕(かいこ)につく天敵の毒素を合成


※ネオニコチノイド系については、一部で人体への影響を懸念する声もある
日経新聞 2014年1月2日付記事
「農薬と人体被害の実態」 第38回日本有機農業研究会全国大会「記念講演」

■なるべく安心できる原料で作られているもの
使用する農薬が自分の納得できる原料で作られていれば安心です。酢等、普段私達が口にしている食品から作ることもできます。4-2で詳しく後述します。

4.農薬の使い方

4-1 商品のラベルから見る農薬の使い方

農薬には以下のようなラベルが貼ってあります。次のような点をチェックして、安全に使用しましょう。
参照:農林水産省HP


「毒物」「劇物」「普通物」の区別
 …なるべく普通物を選びましょう。毒物・劇物の場合は使用・保管に注意しましょう
作物名
 …使える植物を確認しましょう。収穫部位の違いや残留性の違いなどを考慮して、
  農薬を安全に使用できるよう細分化されているためです
適用害虫名
 …効き目のある病気や害虫、雑草の名前を確認して使用しましょう
使用量
 …使いたい面積にどれくらい使うか確認しましょう。
  使用量が記載されていない場合でも過剰に散布すると残留基準値を超える恐れがありますので注意が必要です。
使用時期(収穫の何日前まで使用できるか)
 …残留基準値を超える恐れがあるため注意が必要です
使用可能回数
 …同じ作物に何回使用できるかです。詳しくはこちらをご覧くださいwww.jcpa.or.jp/user/pdf/count.pdf
使い方(どうやって使うか)
△△を含む製剤の総使用回数(成分△△を含む製品を使ってよい回数)
 …一つの製剤ではなく同一の有効成分を含む全ての製剤を使用した回数の合計になります。
  これは各作物ごとに個別に決められています
散布時の防護服など
 …防護服やマスク等が必要な場合は必ず準備しましょう
トラブルの時の対応
 …トラブルの時どう対応すればよいか事前に確認しましょう
使用時の状況の選択
 …風の弱い時など周囲への影響が少なくなる時を選びましょう
他の生物への影響の考慮
 …ミツバチや魚等他の生物を守るために使用場所に配慮しましょう
・残った農薬の保管方法
 …暗くて涼しく、子供の手が届かない、火気のない場所を選びましょう。
  誤飲等がないように食品とは別の場所におきましょう
使用期限
 …有効期限切れの農薬は使用しないでください。農薬は時間の経過などにより徐々に物理性が変化したり成分が分解したりすることがあるためです
参照:農薬工業会HPをもとに作成

4-2 食品で作る虫よけ剤(作り方と使い方)

わたしたちが普段口にする食品で作れる虫よけ剤もあります。食品から作るのでより安心して使用できます。

■作り方と使い方
ストチュウ
酢と焼酎(アルコール度数25度以上)を1:1で配合し、そこに唐辛子(鷹の爪)を入れます(『ガッテン農法』三浦伸章さんから教えて頂いた配合です^^)。
それを3日〜1週間程寝かせて、うっすらオレンジ色になるくらいが目安。希釈しないで使用すると枯れてしまうので、水で300倍に希釈したものをスプレーでかけます。毎日かけると抵抗力がつくので、必要最低限(3~4日に一度程度)にするのがよいでしょう。
虫を退治するというよりは、近寄りづらいようにしてくれます。アブラムシなどの予防として使用するのがよいでしょう。
また、酢には、殺菌・消毒効果もあるため、病気の予防としても使えます。
たくさん作って保存する方もいるようですが、私はその都度、必要な分だけ作るようにしています。

インターネットでは、ストチュウを販売しているところもあります。水で薄めて散布するだけなので作るのが面倒な方にはおすすめです。 「天然ストチュウ (500ml)」イーエムジャパン
参照: 『ガッテン農法』三浦伸章氏
   「乾燥唐辛子にコクゾウムシへの 防虫効果はあるのか」農研機構 食品総合研究所 
    「重層、食酢の病害防除」奈良県HP(酢の殺菌効果について)

5.農薬を使った野菜を安心して食べる方法

農薬を使った野菜をより安心して食べるには、どうすればよいのでしょうか?
以下のサイトでは、皮をむくことが最も効果的ということが示されています。
農薬の種類にもよりますが、調理法では、揚げるのが農薬を減らすのに効果が大きいようです。
次いで、炒めるゆでる、の順です。 水洗いでは、水へ溶けやすい農薬はある程度落とすことができます。
水洗いと洗剤を用いた洗浄ではそれほど差がないようです。
参照:農薬工業会HP

6.農薬を使わない方法

農薬を使わない、つまり無農薬で作物を育てることもできます。
何か問題が起こった時に対処療法的に農薬を使うという考えではなく、そもそも農薬を使わなくてもよいように、作物が元気に成長できるように環境を整えてあげることが大切です。
特に、虫による過度な食害や病原菌による病気の発生を防ぐために、以下の対策が有効です。

6-1 コンパニオンプランツ【虫よけの対策】

異なる種類の植物を混植して、虫や病気を避けます。それぞれの植物の特性を活かして、お互いに助け合えるように配置します。
たとえば、キャベツなどのアブラナ科を植える時は、近くに春菊などのキク科を植えると、その独特の匂いで虫を遠ざけてくれます。また、きゅうりとネギを一緒に植えると、ネギの根っこの持つ消毒能力で、きゅうりを病気から守ってくれると言われています。 このように植物のもつ特性を活かして、育てたい作物を虫や病気からある程度守ることができます。


▼コンパニオンプランツの一例

6-2 寒冷紗(かんれいしゃ)や虫よけネット【虫よけの対策】

目の細かいネットを作物に被せて、物理的に虫を遠ざけます。
特にアブラナ科は多くの虫が好むので、初期はネットを被せて育ててあげるとよいでしょう。小さなうちに虫に過度に食べられて、枯れてしまうことを防ぐことができます。

▼寒冷紗の一例

6-3 過度な湿気はとる【病気の対策】

植物の病気の原因の多くは病原菌(糸状菌・カビ)です。
病原菌は湿気を好みます。水はけの悪い土地では特に、湿気や水の管理をして、病気を予防します。
地上では、風通しを良くし、地中では、水はけをよくすることが大切です。 地上の風通しをよくするためには、適切な間引きが有効です。植物が混みあってきたら、お互い触れ合う距離感になるよう間引きましょう。
地中の水はけをよくするためには、畝の横に溝を掘ったり、畝を高くするとよいでしょう。

▼横に溝を掘って、畝を高くした一例

このように、根本的に植物にとって良い環境を整えることで、植物は元気に育ちます。健康な植物は、虫に食べられにくく、また病気にもかかりにくくなります。 人間でいうと、風邪をひいて風邪薬を飲むのではなく、風邪をひきにくい元気な体や、風邪をひきにくい環境をつくるということになります。

7.まとめ

家庭菜園での農薬についてのまとめです。

・農薬とは、農作物に害を与える病原菌や、害虫、雑草などから守るための薬
・薬を使う際は、正しい使用量や使用方法を守ることが大切
・同じ薬を使い続けると効果がなくなるので、違う系統の薬とローテーションを組んで使うことが大切
・食品を使って作れる虫よけ剤もある
・野菜に残っている農薬を減らすには、皮をむいて食べる
・農薬を使わずに野菜を育てるには、まず健康に野菜が育つ環境を整えることが大切

以上になります。家庭菜園でより安心して野菜を育てられる一助になれば幸いです。
みなさまの家庭菜園での野菜作りがより楽しいものになりますことを心からお祈りしています(^^)