自然農法とは?一般的な農法等との違いについて知ろう!

自然農法ってどんなものなのだろう?
自然農法という言葉を聞いたことがあるものの、どんなものかについてよくわからないなぁと思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
実は、一般的に、自然農法とイメージされる農法の中には、実践者によって様々な手法があり、全く同じではありません。
そこで、今回は自然農法とはそもそもどんなものなのか?自然農法と似ていて名前の異なる栽培方法や、慣行農法や有機農法(オーガニック)との違いは何なのかについて取り上げました。
ぜひ、これを読んで、自然農法やその他の農法についての基本的事項の理解を進めて頂けましたらうれしいです(^^)

1. 自然農法とは?

自然農法を一言でいうと、「山で発揮されているような自然の力を尊重し、活かし、農作物を育てる方法」といえます。以下、詳しくご説明していきます。

1-1 自然農法の考え方・原則

「自然の力を活かし、自然の秩序に従う」。自然農法の提唱者の一人である福岡正信氏の言葉です。
例えば、山は人が肥料を入れなくても痩せることなく毎年成長していきます。
というのも、山では落ち葉等が微生物や虫たちにより分解され、養分となって再び樹木等の植物に使用されるという自然のサイクルが回っているからです。
このように、山で発揮されているような自然の力を尊重し、活かし、農作物を育てることは自然農法の基本的な考え方といえるでしょう。

一般的に最も広がっている慣行栽培が、農薬により虫や微生物の活動を抑え、化学肥料によって直接作物に働きかけて成長させるのに対して、自然農法では、そこに生きている虫、微生物、雑草等の力を最大限に活かして作物を育てるという発想に立っています。
家庭菜園で、自分の手でより安心な作物を育てたいという方には、とてもおすすめできる栽培方法といえます。

具体的には、福岡正信氏は以下の4原則を自然農法の基本にしています。
不耕起(耕さない)、無農薬(農薬を使用しない)、無肥料(肥料を使用しない)、無除草(除草をしない)
参照:「自然農法 わら一本の革命」福岡正信氏

加えて、自然農法に共通する特徴としては、種を採って次世代以降も栽培することができる固定種・在来種の種を使用し、自家採種すること、基本的に水をやらないことがあげられます。

一方で、もう一人の提唱者である岡田茂吉氏の流れを汲むMOA自然農法では、耕起・除草は認め、無肥料、無農薬としています。このように、実践者によって手法は異なっているのは、次に述べるように自然農法の提唱者と歴史が関係しています。

1-2 自然農法の由来・歴史等

「自然農法」の提唱者としては岡田茂吉氏福岡正信氏があげられます。
岡田茂吉氏は、1936年に自宅庭で野菜の栽培を試み、試行錯誤を繰り返し、自然農法の基本的な考え方を確立しました。戦後、この農法を発表し、1950年に「自然農法」と改称しました。

それとは異なる文脈で、福岡正信氏が1937年実験的に自然農法を始め、1947年から、不耕起、無農薬、無肥料、無除草を基本とする自然農法を実践されました。著書である「自然農法 わら一本の革命」は世界各国に翻訳され、自然農法を世界に広めました。

参照:「自然農法入門」MOA自然農法文化事業団 編
「自然農法 わら一本の革命」福岡正信氏

現在も、自然農法国際研究開発センターMOA自然農法文化事業団等が、自然農法の普及に取り組んでいます。

実際に、私も自然農法や自然農法に似ている栽培方法で野菜作りを始めたいというお話を頂いて、来年に向けて畑づくりの準備を始めています。

1-3 自然農法(似ている栽培方法も含む)で作物を栽培する長所・短所

長所
   ・農薬が不要なので、栄養素が豊富に含まれる皮ごと食べられる。
   ・肥料を使わないので、過剰な窒素によるえぐみが出にくく、優しい味わいの野菜を楽しめる
   ・水やりをしないので、水太りしない作物本来の味を楽しめる
   ・自家採種により、年を追う毎に作物がその土地に適応してきて、育てやすくなる

短所と解決策
   ・慣行栽培・有機栽培に比べ、初期成長がゆっくりであるが、
    水太りしていない作物本来の味を楽しめる
   ・種に固定種・在来種を使用するため、成長スピードや大きさにばらつきがあるが、長期間楽しめる
   ・除草剤を使用しないため、除草する場合はその手間がかかるが、安心である
   ・農薬を使用しないため、慣行栽培に比べ、虫との共生が必要であるが、安心である
    
以下の研究では、自然栽培野菜と慣行栽培野菜の化学成分を比較し、自然栽培では、健康に悪影響を与える硝酸態窒素※が低くなったことが示されており、より安心して食べられると言えます

参照:「自然栽培と慣行栽培野菜の化学成分の比較」
弘前大学農学生命科学部 杉山修一氏・遠嶋凪子氏 

※硝酸態窒素を構成する硝酸イオンは、体内で還元されて亜硝酸イオンに変化すると、呼吸阻害症のの原因となったり、発ガン性物質に変化する可能性があるとも一部で指摘されています。
参照:「野菜の硝酸イオン低減化マニュアル」
独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 野菜茶業研究所

2. 自然農法(似ている栽培方法も含む)のスケジュール(種まきから収穫、種とりまで)

栽培する作物によって前後しますが、大まかには以下のようになります。

2~3月 初年度のみ畝作り
4月 春夏野菜の種まき・苗づくり・間引き
5月 間引き・収穫・追い蒔き
6月 間引き・収穫

9~10月 秋冬野菜の種まき・間引き
11~2月 収穫
(蕾・菜花を楽しむなら3月まで収穫可)

▼栽培スケジュールの一例(兵庫県)

3.最新の自然農法と、自然農法に似ている栽培方法について知ろう

1.でご紹介した先人たちが始めた自然農法ですが、現在も進化し続けています。自然農法としての進化はもちろん、異なる名前の様々な栽培方法も生まれています。
これらの栽培方法に通している方向性としては、「必要な人間による介入は認め、栽培の再現性をより上げること」と考えられます。
つまり、自然農法を「誰でも取り組みやすいものに進化」させているものということができます。
以下に、代表的な栽培方法について記述しています。ご自身のお気に入りの栽培方法を見つけてみるのもいいでしょう。

3-1 進化する自然農法「ガッテン農法」

自然農法歴30年以上の三浦伸章氏(MOA自然農法普及員)による、進化を続ける自然農法。野菜が嫌がる(であろう)ことは行わない。農薬や肥料に頼らず、自然の好循環を畑の中に作り出して、そのなかで美味しい野菜を育てることを目指す。必要な耕起、除草はする
「ガッテン農法」 三浦伸章氏

3-2 自然栽培

作物自身が本来持っている能力を発揮し、よく育つために積極的に働きかけをする。必要な耕起、除草をする。「奇跡のリンゴ」の木村秋則氏や、自然栽培全国普及会が知られている。自然栽培全国普及会は自然栽培基準の中で、土壌改良剤等の使用可否について厳密な基準を定めている。
「木村秋則と自然栽培の世界」 木村秋則氏

3-3 自然農

川口由一氏が「耕さず、肥料・農薬を用いず、草や虫を敵としない」という三原則を独自に確立。
田畑の状態も、作物の性質もみな違うため、それぞれに応じた手助けをする。大切なのは、自然を支配しようとせず、添い従い、任せること。耕起はせず、除草は必要に応じてする
養分を多く必要とする作物の周囲には、畑でできた野菜のくず、稲わら、麦わら、米ぬか、小麦のふすま(小麦をひいて粉にした際に残る皮のくず)、菜種の油かすといった暮らしの中から出た不要物を畝の上にまき、自然に腐植してゆくのに任せる。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170823-00010000-nipponcom-env
http://shizennou.info/?page_id=175

3-4 無肥料栽培

自然の摂理を知ることに重点を置く。マニュアルではなく、自然の摂理を観察し、自分で考えて栽培することを奨めている。必要な耕起、除草はする。栽培する人、買う人、食べる人が安心できるものを利用することを重視。肥料には、循環型農業で利用する自家製の植物性の肥料は含んでいない(米ぬか・腐葉土・草木灰・もみ殻くん炭なども同じく含まない)。岡本よりたか氏による。
「無肥料栽培を実現する本」 岡本よりたか氏

3-5 恵み循環農法

自然の叡智を活かし、栄養素の循環が起こりやすい土の構造作りと、相互関係を活かすことを大切にする。必要な耕起、除草はする。無肥料栽培をベースに、最適なコンパニオンプランツ等を実験・研究しながらよりよい方法を積み上げている。Natural Organizations Labによる。
http://megumijunkan.strikingly.com/

▼農法・栽培法のイメージ(概念図)

 

恵み循環農法の畑(40日後の変化)
▼種まき終了直後
大根、カブ、小松菜、ルッコラ、春菊、人参、枝豆、インゲンマメ等を蒔きました♪枯草で土の表面を守っています(^^)

▼1週間後。モコモコ芽が出てきました♪かわいいです(^^)

▼3週間後。かなり緑になってきました。インゲンマメ、枝豆の勢いがすごいです!

▼30日後。向かって右側の大根がグイグイ成長してきました。土の上は野菜でほぼグリーンに♪

▼40日後。わっしゃわしゃです!大根は所狭しと葉を伸ばしています。小松菜、カブも絶賛成長中!

▼60日後(逆方向になっています)。大根の成長が止まらない。マメが実ってきました(^^)

▼75日後。もはやジャングル!この後、風通しのために間引きをしました。大根も収穫♪

▼収穫の一部(60日後)。インゲン豆、カブ、小松菜、大根の間引き菜など。

▼収穫の一部(75日後)。りっぱな大根やカブ、小松菜、春菊が収穫できました!あったかいお鍋に!

 

4.一般的な他の農法について知ろう

一般的に普及している栽培方法としては、慣行(かんこう)栽培と有機栽培があげられます。

4-1 慣行(かんこう)栽培

慣行栽培とは、化学肥料※と合成農薬の使用を前提とした栽培方法。合成農薬により、生物の活動を制御して、雑草、病気、虫食いを抑える。化学肥料によって、作物の成長を促します。

化学肥料の製造法の発明、作物品種の改良、病原菌や害虫、雑草防除のための合成農薬の開発、灌漑などの農地整備が組み合わされたものが、慣行栽培と呼ばれる現在の作物栽培技術といえます。
19世紀半ばの化学肥料への転換、19世紀末の農薬の発見を経て、1950年代から作物収量が急速に増加しました(緑の革命)。

一方で、当初は農薬の安全基準が緩かったことなどから、現在では使用禁止になっている人に対する毒性が強い農薬が広く使われており、1960年代に社会問題となりました。

1971年に農薬取締法改正を経て、残留性が高く、人に対する毒性が強い農薬の販売禁止や制限がなされました。
この頃から農薬の開発方向は、人に対する毒性が弱く、残留性の低いものへと移行していきました。農薬は安全性の確保を図るため登録され、登録された農薬について定められた使用方法を遵守することが定めています。

参照:「すごい畑のすごい土」弘前大学農学生命科学部教授 杉山修一氏
   「農薬の基礎知識 詳細」農林水産省HP

4-2 有機栽培

有機栽培とは、慣行栽培の合成農薬と化学肥料の代わりに、認められた有機資材を用いる栽培方法。一定の条件下で定められた農薬を使用することができます。

日本では、1960年代の公害による食べ物の安全への関心の高まり、さらに、1975年の有吉佐和子氏「複合汚染」(化学肥料や除草剤による土壌汚濁等環境汚染について書かれた本)により、複合汚染社会を克服していく先に有機農業という生き方があるのではないかということを指摘して、有機農業・有機栽培への関心が高まりました。
2000年には、農林水産省により有機JASの規格が制定され、法律により、有機栽培で使用できる資材の種類が決められました。
   
※2006年有機農業推進法では、有機農業とは、「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」と定義されています。

参照:「すごい畑のすごい土」弘前大学農学生命科学部教授 杉山修一氏
参照:「有機農業の到達点」神戸大学名誉教授 保田茂氏

4-3 慣行栽培と有機栽培のメリットデメリット

慣行栽培と有機栽培のメリットデメリットをまとめると以下のようになります。

慣行栽培
メリット  化学肥料により、早く確実に大きくなる
      農薬により、虫や病気による被害を防げる
デメリット 化学肥料により、硝酸態窒素が作物に過剰に蓄えられる傾向がある
      農薬の使用による不安

有機栽培
メリット  有機資材により、化学肥料に準じて作物を大きくできる
      決められた農薬以外は使用できないので、安心度が高まる
デメリット 使う有機資材が家畜の糞の場合、家畜が食べていたものまで遡って安全性を確認するのが困難
      早く成長させるために、大量に有機肥料を投入するケースでは、慣行栽培と同じく硝酸態窒素
      が作物に過剰に蓄えられる傾向がある

このように、慣行栽培や、有機栽培で、より安心して食べられる作物を育てるためには、農薬の使用状況や、肥料の質(その肥料がどのように作られたか)、肥料の量(過剰な量でないか)についても気を配る必要があります。

また、「より安心して食べられるか」を考える上で一つのポイントとなるものに、作物への硝酸態窒素(1-3で前述)の含有量があげられます。

慣行栽培と有機栽培の葉野菜の硝酸含有量については、以下の研究で、一概に有機栽培が少なく
慣行栽培が多いとは言えないことが示されています。
参照:「市販緑葉野菜の硝酸およびシュウ酸含有量」 金沢大学 寺沢なお子氏 荒納百恵氏

また、自然栽培野菜と慣行栽培野菜の化学成分を比較したところ、自然栽培では、健康に悪影響を与える硝酸態窒素が低くなったことが以下の研究で示されています(1-3で前述)。
参照:「自然栽培と慣行栽培野菜の化学成分の比較」 弘前大学農学生命科学部 杉山修一氏・遠嶋凪子氏 

したがって、硝酸態窒素をより低減させることを考えると、自然農法や自然農法に似ている栽培方法は、より安心して食べられる作物を育てたい方におすすめできます。

▼化学肥料と有機肥料の違い

参照:「化学肥料に関する知識」BSI生物科学研究所 

▼慣行栽培、有機栽培、自然農法等で一般的に使用される肥料・農薬について

5.自然農法的農法を学べるおすすめの場所

自然農法や、自然農法に似ている栽培方法を学べるおすすめの場所を以下にご紹介します(^^)
ご興味のある方はぜひご覧になってください。

5-1 自然農法(ガッテン農法)

三浦伸章氏「ガッテン農法」
自然農法を30年以上実践されています。笑顔が素敵です。各地でセミナーを開催。
https://www.facebook.com/nobuaki.miura.9

5-2 自然農

川口由一氏「赤目自然農塾」
1991年からスタートした赤目自然農塾。三重県名張市と奈良県室生村にまたがる棚田にあります。
川口氏はご高齢のため、現在は相談役となっていらっしゃいます。
http://iwazumi.sakura.ne.jp/

5-3 無肥料栽培

岡本よりたか氏「無肥料栽培セミナー」
無肥料栽培を、初心者にも分かりやすくロジカルにお話くださいます。各地でセミナーを開催。
https://www.facebook.com/yoritaka.okamoto

5-4 恵み循環農法

Natural organizations Lab「恵み循環農法ワークショップ」
その土地の環境を知ることから始めます。各地でワークショップを開催予定。
http://megumijunkan.strikingly.com/

6.まとめ

自然農法とは?についてのまとめです。
・自然農法とは、自然の力を活かし、自然の秩序に従いながら、作物を栽培する考え方。
・自然の力を活かしながら、再現性を向上していくことを目指している点が、
 自然農法に似た栽培方法の共通点であると考えられる
・一般的には、慣行栽培や、有機栽培が広まっている
・より安心して食べられる作物を栽培したいなら、自然農法や自然農法に似ている栽培方法がおすすめ
・自然農法や自然農法に似ている栽培方法を学べる場がある

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みなさまの畑ライフがすばらしいものになりますことを、心よりお祈りしております(^^)